「生成AIを使いこなすには、プロンプトが大切です」
生成AIについて調べたことがある人なら、一度は目にしたことがある言葉ではないでしょうか。
実際、これは間違っていません。
「企画を考えて」
とだけ入力するのと、
「20代会社員を対象にしたイベント企画を、予算10万円以内、参加者30人程度を想定して5案提案してください」
と入力するのでは、当然ながら回答の質は変わります。
OpenAIも、明確で具体的な指示を出し、必要な文脈や求める形式などを伝えることを推奨しています。また、一度で完璧な回答を狙うのではなく、回答を見ながら反復的に改善することも基本的な考え方として紹介されています。
だから、プロンプトは大切です。
ただ、私はここで一つ疑問があります。
そのプロンプト、本当に全部自分で考える必要があるのでしょうか?
私がたどり着いたのは「プロンプトすら生成AIに作らせる」という方法
私は高校生に生成AIを教える機会があり、その中でプロンプトについて考えることがあります。
よくあるプロンプト講座では、
- 役割を設定する
- 条件を書く
- 背景を説明する
- 出力形式を指定する
- 具体例を与える
といったテクニックを学びます。
もちろん、こうした考え方を知っておくことには意味があります。
一方で、「#役割」「#条件」「#制約」のような型をたくさん覚えること自体が、生成AIを使う目的になってしまうのは少し違うのではないか、と感じています。
なぜなら、文章、企画、分析など、さまざまなアウトプットを高い水準で生成できるAIなら、良いプロンプトを考える作業そのものもAIに任せられるからです。
そこで私自身が生成AIを使う際に意識しているのが、
「やりたいことを伝えて、まずプロンプトを作ってもらう」
という使い方です。
実はこの考え方は、私個人だけのものでもありません。
Anthropicは、やりたいことを説明するとプロンプトテンプレートを生成する「prompt generator」や、既存プロンプトをAIで改善する「prompt improver」を提供してきました。後者については、同社の特定のテストで分類精度や文字数遵守率が改善したことも報告されています。
研究領域でも、AIを使ってプロンプトを生成・改善する考え方は「meta-prompting」などとして研究されています。
つまり、
「プロンプトをAIに考えさせる」こと自体が、生成AIを活用する一つの方法になっているのです。
人間がやるべきなのは「プロンプトを書くこと」より「頭の中を出すこと」
では、人間は何をすればいいのでしょうか。
私は、ここが生成AI活用でかなり重要だと考えています。
人間がやるべきなのは、完璧なプロンプトを書くことではありません。
自分の頭の中にある情報を、できるだけAIに渡すことです。
文章としてきれいにまとめる必要もありません。
たとえば資料を作りたいなら、
「高校生向け」
「生成AIの授業」
「50分」
「初心者」
「説明ばかりにはしたくない」
「最後に何か作らせたい」
「楽しそうと思ってほしい」
このくらいのメモでも構いません。
そのうえで、
「この内容から、質の高い授業案を生成するためのプロンプトを作って」
とAIに頼みます。
するとAI側が、
対象者、授業時間、到達目標、前提知識、授業構成、制作活動、出力形式……
といった、自分では思いつかなかった観点まで整理してくれることがあります。
ここに、AIにプロンプトを作らせる大きな価値があります。
単なる文章整形ではありません。
AIが「目的を実現するために、他に何を決める必要があるか」を洗い出してくれるのです。
「AIにプロンプトを作らせる」実践方法
やり方は難しくありません。
最初から長大なプロンプトを書く必要はなく、まずは次のように依頼します。
○○をしたいです。
以下が今考えている内容です。・○○
・○○
・○○この目的を達成するために、生成AIからできるだけ質の高いアウトプットを得られるプロンプトを作ってください。
私が見落としている観点があれば補ってください。
情報が不足している場合は、プロンプトを作る前に質問してください。
ポイントは最後の2行です。
「プロンプトを作って」だけではなく、
「見落としている観点を補って」
と依頼します。
さらに必要なら、
「情報不足なら先に質問して」
と伝えます。
こうすると生成AIは、単なる文章作成者ではなく、要件整理を手伝う相手になります。
一発で実行させず「プロンプトを見る」のが大切
ただし、AIにプロンプトを作らせれば何でもうまくいくわけではありません。
私はむしろ、AIが作ったプロンプトを一度読むことが大切だと思っています。
生成されたプロンプトを見ると、
「この条件はいらないな」
「そこは自分の意図と違う」
「なるほど、その観点は考えていなかった」
ということが見えてきます。
特に最後の「その観点はなかった」が重要です。
AIに答えを出してもらうだけでは、自分の思考はそれほど広がらないことがあります。
一方、AIが「良い回答を出すためには何を考えるべきか」をプロンプトとして整理してくれると、自分自身の思考の抜けにも気づけます。
これは、私が教材や授業案をAIと検討するときにも感じることです。
AIが作った案をそのまま採用するのではなく、
「高校生には項目が多すぎないか」
「実際に50分でできるのか」
「生徒は次に何をすればいいか分かるのか」
と人間側でレビューする。
AIが情報を広げ、人間が目的に合わせて削る。
この役割分担は、プロンプト作成でも同じです。
「良いプロンプト」より「良い目的」の方が重要になる
生成AIの性能が上がるほど、私は「プロンプトの型をどれだけ知っているか」の重要性は相対的に下がっていくと考えています。
実際、OpenAIも現在のガイドで、目的・文脈・求める結果を明確に伝えながら、会話の中で反復的に改善することを推奨しています。
一方で、重要性が下がりにくいものがあります。
それが、
「自分は何を実現したいのか」
です。
「ブログを書きたい」ではなく、
誰に読んでもらいたいのか。
読んだ人にどうなってほしいのか。
何を一番伝えたいのか。
自分だから提供できる情報は何なのか。
ここはAIだけでは決められません。
私が生成AI教育を考える際にも、「ChatGPTの操作方法を覚える」こと自体をゴールにはしたくないと考えています。
大切なのは、
「AIで何ができるか」ではなく、「自分が実現したいことにAIをどう使うか」
だからです。
プロンプトも同じです。
プロンプトを書く技術を競う必要はありません。
人間が目的や背景、違和感、好み、経験などの素材を出し、AIに整理・構造化させる。
そして出てきたものを、人間がもう一度判断する。
この往復の方が、生成AI時代には重要になるのではないでしょうか。
明日から「プロンプトを書く前に、プロンプトを作らせる」
もし普段、
「どう指示すればいいんだろう」
とプロンプト入力欄の前で悩んでいるなら、一度発想を変えてみてください。
完璧な文章を書く必要はありません。
やりたいことを箇条書きにして、
「これを実現するためのプロンプトを作って」
と入力してみる。
生成されたプロンプトを読み、
「違う」
「これは必要」
「この観点はなかった」
と修正する。
そして完成したプロンプトをAIに実行させる。
つまり、
人間が目的を出す → AIがプロンプトにする → 人間が直す → AIが実行する
という流れです。
生成AIを使いこなすために、すべてのプロンプト技術を暗記する必要はありません。
むしろこれから大切になるのは、AIに渡すための「正解の文章」を覚えることではなく、
自分が何をしたいのかを言葉にできること。
そして、その曖昧な考えをAIと一緒に具体化していくこと。
「良いプロンプトを書けないから、生成AIを使いこなせない」と感じているなら、まずはそのプロンプト作りからAIに任せてみてください。
生成AIとの付き合い方が、少し変わるはずです。

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